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森鴎外・・・・“雁”より
2013/09/04 Wed. 16:37
category:未分類

岡田という一人の学生が本郷近くの下宿屋に住んでいた。
彼は学業優秀でかつ美男子であった。近隣をカントのように
時間きっちり散歩するのが日課となっていた。
やがて彼はあるこじんまりとした清潔な家で、一人の女性と出会う。
高利貸しの妾となっていたお玉であった。お玉は生来、素直な性格で
父親始め皆から好かれ、そのうえ美人であった。彼女は古いしきたりや
慣習に逆らうことなく、従順に平凡な毎日を送っていた。
そんな彼女に変化が起こる。岡田を毎日見ているうちにだんだんと
恋心を感じるようになってきたのだ。岡田のほうでも好意を抱いて
いるようなのだが、内気な彼は黙って通り過ぎるばかりだった。
お玉が意を決して岡田に告白しようとした時、岡田は不運にも友達と
一緒だった。そしてむなしくお玉の前を通り過ぎてしまった。留学が
決まっていた岡田は、あくる日、日本を立ってしまう。お玉の恋は
こうしてはかなく消えてしまった。
しかしここにはお玉の心の成長がみられる。岡田に恋するうちに、
彼女は“女は従順でなくてはならない”という当時のしきたりを捨てて、
だんだんと自我に目覚め、密かに自分の意志を貫こうとする。女の
自立への戦いが始まったのだ。

お玉はイプセンの“人形の家”のノラでもある。女性を長い間縛って
きた悪しき慣習やしきたりに気が付いたのだ。そしてそれらをふり捨て
新しい自立した女性を目指して進み始めたのだ。
お玉もノラも戦いを始めたばかりで、その後の経緯はここではわから
ない。が、この戦いこそ、明治、大正、昭和、そして今日へと続く、
女性の自立という偉大な目標への先駆けとなったのは間違いない。
鴎外が封建時代の思想が色濃く残る明治という時代に、こんな小説を
書き得たのはまさに驚きであり、鴎外の先見性に敬意を表さざるを
えない。
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